円筒絞りの基本

10.円筒絞りに於ける工程設計の問題点



製品形状が円筒の場合は、素材の板厚、材質、パンチR、ダイRを加味して、無理の無い絞り率、再絞り率で工程の設定をする。

フランジ面が過大のときは、材料のもつ張出し性(延性)を利用して成形する方法と、再絞りを重ねる過程でフランジ面を作る方法がある。
前者はフランジ面が極端に大きい場合に採用し、後者は材料を外側から寄せられる程度の場合に適用する。

広幅フランジ付き円筒絞り製品の成形手法
円筒絞り成形手法A 円筒絞り成形手法B
(A) パンチR、ダイRが過小 (B) 素材の延性を利用
円筒絞り成形手法C 円筒絞り成形手法D
(C) 絞り深さを一定として成形 (D) 絞り深さを深くして成形


  1. (A)の手法は、フランジ面が大きく、しかもパンチRとダイRが過小の場合であり、最初に適正なパンチRとダイRで製品寸法より若干深く絞り、次にリストライクで製品寸法に成形する。また、材料を外側から寄せられないときは、材料を張出して表面積を大きくし、(C)又は、(D)の手法で成形する。



  2. (B)の手法は、材料の張出し性(延性)を利用する場合で、最初に半球形状に張出した後、製品寸法に成形する。



  3. (C)の手法は、最初に大きな パンチRとダイRで外側から材料を寄せる。このときフランジ外形はトリム代を見込んだ寸法にする。次工程からフランジ径と絞り深さは一定のまま、絞り直径とパンチRとダイRを縮小して、最後に製品寸法に成形する。
    この手法は、比較的、材料が厚く、大きな製品で絞り深さが直径に等しい程度の場合に採用する。また、最初から必要な深さに絞れること、製品を歪ませたり、破ったりせずに、素材は大きな面積にわたって張出し加工となるが、素材の板厚は減少する。製品寸法によっては注意する。



  4. (D)の手法は、外側から材料を寄せて絞り、フランジ外形はトリム代を見込んだ寸法にする。そしてパンチRとダイRと絞り直径を縮小して、絞り深さを増す。最後に製品寸法に成形する。また、この方法は板厚が薄く、絞り深さが直径に比べて深い場合に適している。