抜きの基本

5.抜き圧力計算


  打抜きに必要な 「圧力」 は下記の計算式により、概算値を求めることができる。


P = L × t × S × k


P : 抜き圧力(Kg)
L : 抜く形状の全周長(mm)
t : 加工材の板厚(mm)
【(kgf/o2)に換算した場合】
s : 加工材のせん断抵抗(kgf/o2) ≒ (引張り強さ(MPa・N/o2)×80%)
k : 安全率 = 係数(1.1〜1.2)


材質 せん断抵抗(kgf/o2) 引張り強さ(N/o2)
SPC系 26 〜 35 255 〜 344
SPH系 44 〜 100 432 〜 980
SUS430 45 440
SUS304 53 520
真鍮 30 294
22 216
アルミ 20 196


      【引張り強さは、SI単位系で示されているのでせん断抵抗(kgf/o2)に単位換算し計算する。】

1(MPa・N/o2) = 0.10197kgf/o2 1Kgf/o2 = 9.80665(MPa・N/o2)
Kgf/o2 = 0.10197 × (MPa・N/o2) (MPa・N/o2) = 9.80665 × Kgf/o2


実際の「抜き圧力」はクリアランス値及び金型構造よって異なるため使用プレス機の
加圧能力不足とならないよう安全率を考慮し金型設計をする。


※ SI単位とは?
「SI」とはフランス語の"Le Systeme International d'Unites"、で国際単位系の略称です。
公的な資料では、SI単位系が使われています。
もちろん、一般の資料ではそれ以外の単位系も問題なく使うことが出来ます。



補足: せん断抵抗と引張り強さの違い?

せん断力と引張り力とは力の働き方(働く向き)が違います。
引張り力は材料の内部を引き伸ばす方向に働く力で、せん断力は材料に沿って相互に滑り切る方向(引張り力の直交方向)に働く力です。
断面(2次元的)で表現するなら、正方形を長方形にするのが引張り力が働いたときで、正方形をひし形にするのがせん断力が働くときのようなイメージです。
言い換えると一方向に引張った時の強さ(引張り強さ)と、一方向に引張り、かつ引張った方向と直交方向に圧縮したときの強さ(せん断抵抗)といえます。
そして、強さは材料になんらかの外力(引張り力やせん断力)が働いたときにその材料が抵抗する力の最大値のことをいい、強さとか抵抗力、応力などと呼ばれます。
従って、引張り強さはある材料が引張り力を受けたときに抵抗しうる力の最大値で、せん断抵抗はある材料がせん断力を受けたときに抵抗しうる力の最大値です。