円筒絞りの基本

5.円筒絞りに於ける「LDR」



円筒絞り成形に於いて、円筒の直径(d) に対するブランク直径(D) の比 (D/d)を「絞り比」といい、その逆数(d/D)を「絞り率」という。ここで絞りを何回も繰り返す再絞りに於いて、第一絞り比が(D/d1)であったとき、これを第2絞りを行って直径が(d2)になればこの時の絞り比は(d1/d2)と定義し、これを「再絞り比」という。
ブランク材料 円筒絞り製品

絞り比 絞り率 再絞り比


1回の絞りで破断を起こさないで円筒を絞ることのできる最大のブランク直径を (Dmax) としたとき、(Dmax /d) を「限界絞り比」、あるいは「 LDR ( Limiting Drawing Ratio ) 」と言いブランク材の絞り性の指標としている。
特殊な条件でない限り通常の金属薄板材料の「限界絞り比」はおよそ2の近辺の値を取る。


板厚とダイ肩半径が一定の状態で考えると、ブランク直径が大きくなるほど「LDR」が小さくなる。
その原因はブランク直径が大きいほど相対的に板厚が減少することになり、フランジしわが発生しやすくなるので、しわ押さえ圧が大きくなるためと考えられる。


ブランク直径が小さいと相対的に板厚が大きくなり、曲げ抵抗が増加して「LDR」が減少する。
逆にブランク直径が大きいと、相対的な板厚が小さくなり、「LDR」が低下する。


「限界絞り比」は製品寸法を同じにした場合、ブランク材の板厚が薄いほど小さくなる。
この原因としてはブランク材の板厚が薄くなるとしわ抑え圧が大きくなり、フランジ部分の半径方向応力に占める摩擦力の比率が大きくなるためと考えられる。
したがってブランク材の板厚が薄い場合、ブランク材と金型の摩擦力を小さくすることが効果的である。